思考スイッチチェンジ

ネガティブな出来事の捉え方を変える:CBTリフレーミングの基本と実践

Tags: CBT, リフレーミング, ネガティブ思考, 考え方, 実践法

ネガティブな出来事に対する「捉え方」を変える重要性

私たちは皆、日々の生活の中で様々な出来事に遭遇します。仕事での小さな失敗、人間関係での誤解、予期せぬ予定の変更など、時にはネガティブに感じられることもあるでしょう。

こうした出来事が起きたとき、私たちは無意識のうちにその出来事を「どのように捉えるか」を判断しています。そして、その「捉え方」が、私たちの気分や感情に大きな影響を与えます。

例えば、プレゼンで少し言葉に詰まってしまったという出来事があったとします。

ある人は、「なんて失敗だ。自分は話すのが下手で、もう人前で話すのはやめよう」とネガティブに捉えるかもしれません。この捉え方は、落ち込みや自己否定といった感情につながりやすいでしょう。

一方で、別の人は、「少し詰まったけれど、伝えたいことは概ね伝えられた。次回はもっと準備をしっかりしよう」と現実的に捉えるかもしれません。この捉え方であれば、反省点を次に活かそうという前向きな気持ちにつながりやすくなります。

このように、同じ出来事でも、捉え方によってその後の気分や行動は大きく変わります。ネガティブな出来事に対して、よりバランスの取れた、あるいは建設的な捉え方を見つけることは、気分を安定させ、前向きに進むために非常に役立ちます。

この記事では、認知行動療法(CBT)で使われる「リフレーミング」という技法をご紹介します。これは、ネガティブな出来事や考え方に対し、意図的に別の「捉え方」や「視点」を見つけるための実践的なスキルです。

CBTにおける「リフレーミング」とは

リフレーミング(Reframing)とは、文字通り「フレーム(枠組み)をリ(再び)作る」という意味です。ある出来事や状況、考え方に対して、これまでとは異なる角度から光を当て、別の意味づけや解釈を与えることを指します。

心理学、特にCBTでは、このリフレーミングを、ネガティブな自動思考や出来事に対する非現実的な捉え方を修正するために用います。

有名な例として、「コップに水が半分入っている」という状況があります。

どちらの捉え方も、出来事自体(コップに水が半分ある)は変わりません。しかし、それをどのように「枠付け」するかで、感じ方やその後に続く思考が変わります。

リフレーミングは、単に無理にポジティブに考え直すことではありません。事実に基づきながらも、可能性のある他の視点や解釈を探求し、より現実的でバランスの取れた考え方を見つけることを目指します。

リフレーミングを実践するステップ

リフレーミングは、意識的に練習することで身につけることができるスキルです。ここでは、日常生活でリフレーミングを行うための具体的なステップをご紹介します。

ステップ1:ネガティブな出来事と捉え方を特定する

まず、あなたがネガティブだと感じている出来事や状況を一つ取り上げます。そして、その出来事に対して、あなたが現在どのように捉えているか(考えているか)を具体的に書き出してみます。

例: * 出来事: 仕事の締め切りに少し遅れてしまった。 * 現在の捉え方(ネガティブな考え): 「自分はなんてダメなんだ。いつも計画通りにいかない。上司からも評価されないだろう。」

ステップ2:別の「捉え方」を探す

次に、特定した出来事に対して、現在のネガティブな捉え方とは異なる、別の可能性のある捉え方をいくつか探してみます。このとき、必ずしもポジティブである必要はありません。より現実的な視点、他の可能性、あるいはそこから学べることなどに焦点を当ててみましょう。

以下の質問を自分に問いかけてみると役立ちます。

例(ステップ1の出来事に対する別の捉え方): * 「締め切りには遅れたが、その分質を高めることができたかもしれない。」 * 「今回遅れた原因を分析すれば、次回の計画に活かせるだろう。」 * 「上司は締め切りに厳しいかもしれないが、それ以外の点(努力や成果)も見てくれているかもしれない。」 * 「誰にでも締め切りに遅れることはある。完璧でなくても、リカバリーの方法はあるはずだ。」

ステップ3:新しい捉え方を当てはめてみる

いくつかの別の捉え方が見つかったら、それらの捉え方を元の出来事に当てはめて、どのように感じるか試してみます。最も現実的だと感じられるもの、あるいは気分が少し楽になるものを選んでみましょう。

そして、「もしこの新しい捉え方が正しいとしたら、私は次にどうするだろう?」と考えてみます。

例(ステップ2で考えた別の捉え方から): * 「締め切りに遅れたが、原因を分析して次回に活かそう。上司には正直に報告し、今後の対応を伝えることにしよう。」

このように、ネガティブな捉え方にとらわれるのではなく、別の視点から出来事を見直すことで、過度な自己批判や落ち込みを避け、建設的な行動につなげることが可能になります。

リフレーミング実践のポイント

まとめ

ネガティブな出来事によって気分が落ち込むとき、それは出来事そのものよりも、その出来事に対するあなたの「捉え方」が大きく影響していることがあります。CBTのリフレーミングは、この「捉え方」を意識的に見直し、より現実的でバランスの取れた視点を見つけるための有効な技法です。

今回ご紹介した3つのステップ(特定する、別の捉え方を探す、当てはめる)を参考に、ぜひ日常生活の中でリフレーミングを実践してみてください。最初は難しく感じるかもしれませんが、繰り返し行うことで、少しずつ考え方の幅が広がり、ネガティブな感情に振り回されにくくなるのを感じられるでしょう。

リフレーミングは、あなたが出来事に対する考え方の「スイッチ」を自分で切り替えるための強力なツールです。小さな出来事から試してみて、少しずつその感覚を掴んでいきましょう。